蟻の時間
Categorygallery*短編物語

蟻の12時間は象の水浴びの時間
蟻の24時間は恐竜の一歩の時間
象の涙の一滴は蟻の10日分の食料
恐竜の汗の一滴は蟻の一生分の水分
蟻は考えた
象の涙をたくさんもらうには、象を笑わせたり泣かせたりする
恐竜に汗をたくさんかかせるには、恐竜にたくさん動いてもらう
しかし
回転する時間軸があまりにも違うから蟻のスピードに象も恐竜も追い付けない
蟻は考えた
これでは飢えて死んでしまう
そうして蟻は
象の鼻先で芸をするのをやめ
恐竜の背なかに乗って噛みつくのをやめた
ある日蟻は
飢えそうになりながらも
花の蜜を集めることを覚えた
蟻の12時間は花が蕾を開く時間
蟻の24時間は花がもっとも盛る時間
蟻の涙の一滴は花の蜜の一滴
蟻の汗の一滴は花の水分の一滴
だった
花というパートナーを得た蟻は
象の鼻先でいっそう淡麗な舞を踊り
恐竜の背なかに乗って大地を闊歩した
(完)
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